自分の嫌な部分と向き合う勇気をくれる…そんなささやかな都市伝説『リカバリー・カバヒコ』

小説

はい、こんにちは。キザメです。

今回は、

青山美智子さんの「リカバリー・カバヒコ

を紹介していきます。

 

青山先生の作品は、これが2作品目となりますが、

とても好きな作家さんです。

初めて読んだのは、昨年の本屋大賞にノミネートされた、

「月の立つ林で」という作品になりますが、

この作品が自分の中では、ぶっ刺さりまくってしまいまして、

歴代ナンバーワンと言っても過言ではないくらいなわけです。

 

そして、今回紹介する、「リカバリー・カバヒコ」もまた

本屋大賞2024にノミネートされた作品ということで、

読むのが楽しみでした。

実際、素敵な内容の物語でしたので、ぜひ紹介させてください。

 

それでは始めていきましょう。

あらすじ

5階建ての新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。

近くの日の出公園には古くから設置されているカバのアニマルライドがあり、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。

人呼んで”リカバリー・カバヒコ”。アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。

高校入学と同時に家族で越してきた奏斗は、急な成績不振に自信をなくしている。偶然立ち寄った日の出公園でクラスメイトの雫田さんに遭遇し、カバヒコの伝説を聞いた奏斗は「頭脳回復」を願ってカバヒコの頭を撫でる――(第1話「奏斗の頭」)

出産を機に仕事をやめた紗羽は、ママ友たちになじめず孤立気味。アパレルの接客業をしていた頃は表彰されたこともあったほどなのに、うまく言葉が出てこない。カバヒコの伝説を聞き、口を撫でにいくと――(第3話「紗羽の口」)

誰もが抱く小さな痛みにやさしく寄り添う、青山ワールドの真骨頂。

Amazon商品ページより引用
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見どころ

アニマルライドのカバヒコがいる日の出公園の近隣では、

「自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復する」

というささやかな都市伝説が囁かれていた。

その日の出公園の近くに建てられた新築分譲マンションであるアドヴァンス・ヒルに住まう人たちには人知れず抱えている悩みがあった…。

 

カバヒコに触れてでも治したいという切実な想いを持った登場人物たちが、

自分の不安の種であったり心の弱さといったものに向き合っていく物語。

 

作中で登場する人物たちは、それぞれに悩みを抱えている。

ただ、各話のタイトルにある「頭」「口」「耳」「足」「目」に病を抱え、

それを取り除いてほしいというような単純な話ではなく、

各人の置かれた状況における不安やストレス

もっと言えば目を背けてきたことが自分に降り掛かってきているような状況です。

 

中学までは学年トップの成績で、高校にも推薦で合格していたためしばらく勉強から離れていたら、進学校の勉強についていけず一気にやる気を失いかけていた高校生や、

 

転職してきた同僚の仕事の進め方の違いに自分のペースを乱され、挙げ句、仲の良かった同期(男性)と付き合っていることがわかり体調を崩してしまった女性、

といった人物たちが描かれています。

 

個人的に好きな話は、

第一話の「奏斗の頭」ですね。

先にも挙げた高校生のお話です。

 

授業についていけず、ふらりと立ち寄った日の出公園で出会ったのは、

クラスメイトの雫田さん。

奏斗目線で勝手に「できない人」同士だと思い、仲良くなっていく。

しかし、苦手だと言っていた地理でトップの成績を取っていた雫田さん。

皮肉を込めて言った

「地理、めっちゃ苦手って言ってたじゃないか」

に対する雫田さんの

「苦手だから、めちゃめちゃ、めっちゃ勉強したんだよ。

誰かに勝ちたかったんじゃなくて、私が、頑張りたかったんだ。」

の言葉。

 

これを素で言えるのはカッコいいですよね。

 

話だけ聞くと奏斗の自業自得で卑屈になったりしていて、

決して褒められた態度や状況ではないのですが、

その後雫田さんの境遇を聞き、

本当に努力している人の存在を知ったことで

「変わりたい」と覚悟を決めてからの行動が、

個人的にはこの作品を輝かせている気がします。

 

どんな行動に出たのかは、本書をぜひ読んでみてください。

 

作中で描かれている不安弱さは、

誰もが抱えうる物だと思うので、

きっと色んな人に刺さる作品なんじゃないかなと思います。

 

カバヒコに触れることというのは、

自分の切なる心の内を自覚すること

なんだと思います。

そしてそれは、

目を背けてきた現実の根っこの部分にしっかりと向き合うための1歩

を踏み出す勇気になるんだろうなと思いました。

 

実際には、カバヒコは私達の周囲にはいないわけですが、

きっと皆さんの中にカバヒコに類する存在がいると思います。

思い入れのあるぬいぐるみでもいいでしょうし、

大好きなフィギュアだっていいでしょう。

要は悩みを独白できる相手がいればいいんだと思っています。

言葉にするだけでも違うのかなと思いますので、

モヤモヤを抱えている方は、何かに話してみたらいかがでしょうか。

あくまで作中の話にはなりますが、

カバヒコに触れて回復した人たちが次の人のエピソードに出てきて、

その後の様子を見せてくれていますので、

「よし!私も!」って思わせてくれるんじゃないかなと思います。

 

登場人物たちのその後の経過を知れるのも青山作品の好きなところです

https://amzn.to/3vTrwIp

終わりに

ここまで、

青山美智子さんの「リカバリー・カバヒコ

を紹介してきましたが、

いかがでしたでしょうか?

 

青山先生の作品は、

キーとなるアイテムが中心にはなるものの、

それだけじゃなくて、救われた人たちが、

次の話で出てきたりして、背中を押していたりする展開が好きなんですよね。

これからも追っていきたい作家さんです。

 

青山美智子さんの「月の立つ林で」の紹介記事を書いています↓

【ツキない話】あなたもきっと月を見上げたくなる!「月の立つ林で」作品紹介
今回は、青山美智子さんの「月の立つ林で」を紹介していきます。本屋大賞にもノミネートされた作品です。「月」や「ポッドキャスト」がメインで関わってくる作品で、私たちにとっても身近なものなので、読んでいると「なるほどな」と思ったり、ついつい月を見上げてみたくなったりする作品だなと思いました。ぜひ読んでみてください。

また、他の本屋大賞ノミネート作についても紹介記事を書いていますのでぜひ読んでみてください。

【本屋大賞ノミネート】まるで哲学書!?著者の思考の深さを窺い知れる短編集『君が手にするはずだった黄金について』
今回は、小川哲さんの「君が手にするはずだった黄金について」を紹介していきます。2024年の本屋大賞にも小川さんの作品がノミネートされました。ノミネート作品である本作は、エッセイのようであり創作物のようでもあり、はたまた哲学書のようでもある、そんないろんな顔を見せてくれる作品です。ぜひ読んでみてください。

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