はい、こんにちは。キザメです。
今回は、
町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」
を紹介していきます。
2024年に映画化された本作ですが、
2021年の本屋大賞で大賞を受賞した作品でもあります。
気にはなっていたのですが、
映画化ということで、手に取った次第です。
テーマがテーマなだけに重さもありますが、
最終的には希望に溢れた作品だと思います。
それでは始めていきましょう。
あらすじ
52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高さの周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。
何も届かない、何も届けられない。
そのためこの世で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、魂の物語が生まれる。
本書裏表紙より引用
見どころ
いや~
これは泣きましたね。
様々な出会いと別れ。
メインテーマである「虐待」。
そして、「魂の番」と52ヘルツで鳴くクジラ…。
色々なものが積み重なり希望を感じられる結末を迎えてくれるのですが、
その過程で訪れる「切ない」でも「悲しい」でも言い表すことのできないような辛い別れが、
この作品を際立たせています。
そこで得られる気づきこそがこの作品の本質なのかなと思っています。
ここからは作品の大まかな概要を話しつつ、
その「本質」について触れていきたいと思います。
主人公の貴瑚は、
とある理由から祖母が晩年を過ごした大分に移住してきた。
定職についていない貴瑚は、地元民から奇異の目で見られていたが、
特に気にする様子もなくマイペースに暮らしていた。
ある日土砂降りの中、
古傷が傷んでうずくまっていた貴瑚は、一人の少年と出会う。
傘を差しだしてくれたその少年は、
一見女子かと思うほど髪が長く、
衣服はボロボロで、腕には痣が見えていた。
悪い予感のした貴瑚は、
あることないこと理由をつけてその子を自宅へ連れて行った。
お風呂に入ろうと服を脱がせると、
腕に見えていた痣は全身に至り、
そして、ビックリするほどやせ細っていた。
驚いた声を上げた際に、
その少年は逃げ帰ってしまうのですが、貴瑚は「虐待」を確信する。
というのも、実は貴瑚自身が「虐待」を受けてきた過去があるからなのでした。
このような感じで始まっていき、
貴瑚と「ムシ」と呼ばれている少年との関わりが描かれる現在の話と
貴瑚が大分に移住するまでが描かれた過去の話が並行して展開されていきます。
この作品は大きなテーマとして、
「声なき声を聴く」
というのがあると思います。
現在の話にせよ、貴瑚の過去にせよ、
「虐待」というのが大きなウェートを占めていて、
家族という「呪い」に縛られ抜け出せなくなっている人に手を差し伸べていくというのが物語の大筋となっています。
現在では貴瑚が愛(ムシ)に、
過去ではアンさんと美晴が貴瑚に、
手を差し伸べています。
ある意味、
この2人は目に見えておかしいというのが分かる心身の状況でしたので、
見て見ぬふりをする人が多い中、
手を差し伸べた人達は称賛されるべき行動をとったと言えます。
ただ、この作品の凄いところ…と言っていいのか分かりませんが、
この作品では、
救う側にいると思われる人物にも「声なき声」があるということを描いていて、
得てしてそちらの声の方が表に出てきにくかったりします。
そして、それが悲しい別れに繋がったりします。
このことから、
その大小や表面化しているかに関わらず、
きっと「声なき声」というのは誰もが抱えるもので、
それは立場に関係なく、
耳を傾けようとしないと届かないものなんだなと考えさせられましたね。
そして、この作品のキーワードともいえる「魂の番」。
作中では、「愛を注ぎ注がれるような存在」として出てくる言葉で、
貴瑚が親元を離れ、第二の人生を始める際にアンさんが、
きっとそういう存在に出会えるよと話しています。
作中では、明確に魂の番は誰々だったというような表現はないのですが、
個人的には、アンさんや愛(ムシ)以上に、
美晴の存在こそ貴瑚にとっては魂の番だったんじゃないかなと思っています。
現在においても過去においても貴瑚のことを見つけ出し、
強引なところはあれど、ちゃんと話を聞いてくれ、
ムシとのことについても積極的に行動することを促した。
結果的に高校時代から要所要所で傍にいた存在というのが美晴です。
きっとアンさんだけだったらここまで貴瑚を引っ張り上げることは出来なかっただろうし、
貴瑚だけだったら愛(ムシ)のことも進展しないままだったのかもしれない。
こうやって言葉にしていて思いましたが、
美晴は魂の番というよりは、
二つの魂をツガイとして結びつけるキューピット的な存在だったのかもしれませんね。
みなさんには、魂の番と言えそうな人はいますか?
私は親兄弟を除けば、妻以外思い至らないというのが正直なところです。
思いの外、深くない繋がりだったのかななんてガックリしつつ、
それでも一人と繋がれたことに安堵します。
これからも人の声なき声にも耳を傾けていきたいなと思いました。
余談ですが、
個人的にはこの作品が、
「貴瑚が愛と一緒に生きていくと腹をくくりました」
では終わらせず、
現実的な側面として、
親権の問題や無職のままでは養子に迎えることは難しいことなど
様々な課題に突き当ります。
ただ、一緒に生きていきたいと声をあげたことで
様々な人が意見を出し、サポートしてくれる人も現れ、
2人が家族として生きていく後押しをしてくれるようになります。
序盤では世間との関わりを断ち、1人孤独に生きていこうとしていた貴瑚が、
愛と出逢い、一緒に生きたいと声を再びあげたことが
そもそもとしてグッときますし、
発した声はきっと誰かにきっと届いている
という希望を感じさせてくれるこの展開が
この作品の魅力なんだろうなと思います。
ぜひ読んでみてください。
終わりに
ここまで、
町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」
を紹介してきましたが、
いかがでしたでしょうか?
重い展開ながらも、希望のある結末でホッとしました。
町田さんの作品は昨年の「宙ごはん」を読んでいますが、
こちらも悲しい別れがあったりしますが、
それを経ての登場人物の成長が感じられるので、
読後感は温かな気持ちになれます。
これが町田作品の魅力なんでしょうね。
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