はい、こんにちは。キザメです。
今回は、村田沙耶香さんの
「殺人出産」
を読みましたので、紹介していきたいと思います。
「殺人出産」は表題作を含めた4作品からなる短編集です。
この作品を手に取ったのは、
YouTubeチャンネルの「ほんタメ」で表題作の「殺人出産」や「余命」という作品が紹介されたのがきっかけです。
この本は一応ディストピア作品という括りて紹介されることが多いようですが、起こらないとは言えない世界観だなというのが、正直な感想ですね。
それでは、
感想を交えながら紹介していきたいと思います。
作品概要
今から百年前、殺人は悪だった。
10人産んだら、1人殺せる。
命を奪うものが命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。
会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。
蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。
未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。
昨日の常識は、ある日、突然変化する。
表題作他三篇。
本書裏表紙より引用
掲載作品紹介
どの作品も命と性について考えさせられる作品でした。
どの作品も、近くにはなくても決して手の届かない話ではないなというのが、妙な現実感といくらかの怖さとなって、読む手を進ませてくれたなという印象です。
ここからは各作品を紹介していきます。
「殺人出産」
産み人となり10人出産すると、1人を殺すことができる殺人出産システム。人口減少に歯止めをかけるために取り入れられた制度で、自然出産がほとんどなくなった世界において、産み続けるモチベーションとして「殺意」という衝動を取り入れたもの。
また、この制度以外で行われた殺人は罪であり、死刑などにはせず、「産刑」と呼ばれる牢獄で一生子を産み続ける刑に処される。男性には人工子宮が埋め込まれ、同様に産み続けることになる。
この話を読んでまず思ったことは、このままの日本だと、いずれこういう思想が出てくるんじゃないかなということです。
もちろん殺人と結びつけるものではなく、産んだ人数に応じて、社会的地位や優遇を保障するとか…
うーん…
でも、動機としては弱いのか…
みたいなことをついつい考えてしまう作品でした。
命の尊さと儚さ、
人を産むということの壮絶さとその一方で殺される時は呆気ない、
そんな対となる感情が抱ける作品でした。
殺意は長続きしない
みたいな話を聞いたことがありますが、
最短でも10年、
長引く人はどこまでもかかってしまう中、
殺意を持ち続けるという決意…
そのことにただただすごいと思うばかりでした。
この他の3作品は短い短編なので、ざっくりとした紹介にとどめさせていただきます。
「トリプル」
カップルではなく3人で成立する恋人関係の話。
3人でのキスや性行為しか知らない子が、カップルのそれを見た時何を思うのか?
「清潔な結婚」
性別のくくりに囚われない、仲の良い兄妹のような夫婦関係を望んだ夫婦。
夫婦間の性行為を望まないが、子供は欲しい。
果たして2人はどういう道を選ぶのか?
「余命」
死んでも蘇生される寿命という概念がない世界。その代わり、自分で自分の死期や死に方を決めることのできる世界でもある。
そんな世界でこれから死のうとする人の行動録のような作品。
終わりに
「殺人出産」いかがでしたでしょうか?
今の私たちの常識が、
果たして100年後の世界でも同じように常識として話せるものなのか?
ふと、そんなことを考えてしまいますね。
もしかしたら、この作品が100年後には予言書となっているかもしれないですね(笑)
ぜひ、読んでみてください。
また、以前の記事で、
短編集を3作品紹介した記事も書いています。
ほんと短時間で読める作品を選んでいますので、
あまり長編は読む時間ないなという方に
オススメの記事となっています。
今回はここまで!
ありがとうございました。
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