【カドブン夏フェア2022】偽りの春〜神倉駅前交番 狩野雷太の推理〜

小説紹介

はい、こんにちは。キザメです。

今回も夏の読書フェアに選ばれた作品を紹介していきたいと思います。

 

今回は、

角川文庫の「カドブン夏フェア2022」より、

「偽りの春〜神倉駅前交番 狩野雷太の推理」

を紹介していきます。

それでははじめていきましょう。

 

あらすじ

老老詐欺グループを仕切っていた光代は、メンバーに金を持ち逃げされたうえ、「黙っていてほしければ、一千万円を用意しろ」と書かれた脅迫状を受け取る。

要求額を用立てるために危険な橋を渡った帰り道、ヘラヘラした警察官に声をかけられ—。

第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作「偽りの春」をはじめ、”落としの狩野”と呼ばれた元刑事の狩野雷太が5人の容疑者と対峙する、心揺さぶるミステリ短編集。

感想

この作品は、以下の5編の短編で構成される作品です。

  • 鎖された赤
  • 偽りの春
  • 名前のない薔薇
  • 見知らぬ親友
  • サロメの遺言

帯にもありますが、

この作品の特徴は犯人目線で物語が進んでいくことにあります。

はじめは、

犯人が犯行に至った経緯や背景が書かれ、

実際に犯行の様子なども書かれます。

犯人目線なので、

犯行に及ぶ際の心情がリアルに描かれています。

 

そして、犯行を終えたあと、

タイミングよく(悪く?)狩野雷太が介入することになります。

介入する理由も、各話によって異なりますが、

大事な鍵を無くしたために、狩野のいる交番に確認に来たり、

犯行を終えバスを待っていると、疲れからふらついてしまい、そこを通りかかった狩野に声をかけられたり、

など、

犯人からしたらアンラッキーと言える状況で狩野と関わってしまいます。

 

そしてこの、狩野雷太はかつて刑事だった頃、

「落としの狩野」と呼ばれるほど、

取り調べが得意だったようで、

犯人目線で会話をしていると、

話術が上手く、言い方は悪いですが、とにかく苛立たせ方が上手くて、

会話の主導権を常に握られている感覚にさせられます。

なんでこのお巡りさんはこんなことを聞いてくるんだろう?

とか

何か疑われることを自分はしゃべったんじゃないか?

とか

とにかく疑心暗鬼に陥ってしまいます。

その様子が犯人目線で描かれているので、

あまり味わいたくはないですが、

追い詰められていく感覚を味わえます。

最後は元相棒の葉桜刑事から、

逮捕後の後日談の情報が入ってきたりして、事件の顛末がハッキリします。

 

ただ、それだけでは終わりません。

というのも、

どの話にも、犯行の過程や犯行を起こすきっかけとなるトラブルが起こるのですが、

そのトラブルがどうして起きたか、

また、誰が起こしたのか…

その辺りが明らかになると、どんでん返しとまではいかなくても、

少しゾワっとするので、最後まで楽しむことができます。

 

この5編の中で、

狩野がどうして交番勤務になったのか…

そういったことも追える構成になっているので、

その辺りも楽しんでいただけるかと思います。

 

個人的に好きなのは、

3話の「名前のない薔薇」

ですね。

というのも、収録作の中では唯一

終わり方に希望の持てる感じの話だからですね。

殺人事件ってわけでもないので、比較的軽い感じで読めると思います。

 

終わりに

ここまで

「偽りの春〜神倉駅前交番 狩野雷太の推理〜」

を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

犯人たちが抱く狩野雷太の第一印象が

ヘラヘラしてるとか、

締まりがないとか、

そんなのもが多く、

しかも、話も直球では聞いてこないので、

取り調べを受ける側からしたら

意図が読めず、イライラしてしまいます。

再三言ってしまっていますが、

犯人目線で描かれているので、

その苛立ちや戸惑いが臨場感となって感じられる作品です。

 

取り調べを受ける容疑者の気持ちが分かる作品だと思うので、

ぜひ読んでみてください。

ちなみに、この狩野雷太の次の作品も出ています。

次のは長編のようです。

まだ、読めてはいないのですが、

この作品を読んで、面白かったので、

次回作もぜひ手に取ってみたいと思っています。

気になる方はそちらも併せて読んでみてください。

また、別の読書フェアの「新潮文庫の100冊」より、

「ルビンの壺が割れた」を紹介した記事も書いていますので、

そちらも読んでいただけたら幸いです。

【新潮文庫の100冊】ルビンの壺が割れた 作品紹介
今回は、夏の読書フェアの1つ、新潮文庫の100冊より、宿野かほるさんの「ルビンの壺が割れた」を紹介していきます。

今回はここまで!

ありがとうございました。

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