【あなたはわたしのことを、どれだけ知ってる?】他人と生きる苦しさと救いを感じられる作品『川のほとりに立つ者は』

小説

はい、こんにちは。キザメです。

今回は、

寺地はるなさんの「川のほとりに立つ者は

を紹介していきます。

 

この作品は「本屋大賞2023」にノミネートされており、

それきっかけで手に取りました。

寺地はるなさんの作品は初読みでしたが、

生きてきた環境価値観の違い

そこから生まれるすれ違いといった

人と関わる上で避けられないような葛藤

様々な登場人物を通して

苦しいくらいに深掘りされて描かれていて、

読んでいて自分のことや

これまで関わってきた人たちのことが

頭に浮かんできました。

 

詳細は後述しますが、

記事を書くために読みながら書き記しているメモは

最近読んだ本の中では1番多かったです。

 

それでは始めていきましょう。

あらすじ

カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。
松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。


「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、

他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。

Amazon商品紹介ページより引用
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見どころ

この作品を読んで思うことは、

人は自分の見聞きしたことでしか

判断できないんだなということです。

 

作中でこんなセリフがあります。

 

清瀬には松木が今までとってきた行動でしか、

松木を判断でけへんってことやん。

疑わしい行動をしたから松木は清瀬に疑われた。

それだけのことちゃうの。

 

これは、松木が意識不明で入院している間に

清瀬が松木の部屋で見つけたノートを読んだことを機に

松木の隠し事の全容が見えてきたことで、

清瀬が自分の言動を後悔していた時に

友人の篠ちゃんがかけた言葉です。

 

これはホントその通りだなと思いましたね。

 

後になって事実を知ったり、

冷静になってから振り返ったときというのは、

もっとこうしたらよかった」とか、

なんで相手の気持ちをもっと想像して話せないんだろう」とか、

自分がもっと上手に立ち回れたはずという視点で考え、

自分の言動を後悔してしまう事が多いのかなと思います。

 

でも、その発言をしたその時は、

これまでの積み重ねその時点で自分が知っていること

その時の気持ち余裕のなさなど

いろんなものがごちゃまぜになって生まれた言葉や態度なので、

その時を冷静になって話すというのは難しいことなんじゃないかなと思うんです。

 

実際、清瀬は、

アンガーマネジメントとは少し異なるかもしれませんが

気が重い時、疲れている時、次の行動にうつるきっかけとして

「一、二、三」と3つ数えて動くことが習慣として身に付いているのですが、

松木とケンカしたときはそんなふうに落ち着く間もなく

言い合いに発展してしまっています。

 

 

しかし、その一方で

松木にも清瀬に隠し事をしていた理由、

それを言えなかった理由があります。

 

一つは隠し事を共有する相手との約束。

ただ、松木は一度清瀬に隠し事の内容を話そうと

決意したこともあったのですが、

そのタイミングで2つ目の理由となる、

清瀬の「真面目で頑張り屋」故の他者への狭量さ

が垣間見えるやり取りがあり、

松木は、清瀬には話してはいけないと思うのでした。

 

このように、誰かの目線で見れば

その相手が悪のように見える出来事だったとしても、

相手目線で見れば同様にその人が悪のように見えていたりするものです。

 

作中作として登場する

夜の底の川」の一節

『あなたはわたしのことを、どれだけ知ってる?』

この言葉が全てを表しているような気がします。

 

結局のところ、

価値観や考え方、育ってきた環境の違う自分以外の人を

100%理解することはおそらくできないでしょう。

ただ、お互いに居心地のいい所まで

すり合わせることはできると思います

そのために必要なのが、

対話なんだろうなと

この作品を通して思いました。

 

別の場面になりますが、

このことを表現してくれている1節があります。

 

もしかしたらあの時「常識」とはどういうことか、

みんなでしっかり話し合うべきだったのではないだろうか。

ほんとうに責められるべきは自分なのに、

彼女ひとりに押し付けてしまったのではないか。

 

これは、清瀬が店長を務めるカフェで

トラブルの絶えない品川さんというスタッフのことを考えていた時の

清瀬の思考を切り取ったものになります。

 

恋人とのことにせよ、

職場でのことにせよ、

最終的には人対人であることは変わりないと思うので、

考えをすり合わせる対話を怠ってはいけないなと思いました。

 

 

この作品では、取り上げた部分以外にも、

  • ADHD(注意欠如・多動性障害)やディスレクシア(発達性読み書き障害)といった発達障害についての話
  • 松木と両親との関係性ーなぜ母親は松木を「乱暴な子」と言い続けたのか
  • 菅井天音のその場しのぎな生き方

など、人との関わり方

先入観というものがどれほどその人の印象を狂わせてしまうのか

といったことを考えさせてくれるテーマが多く、

色々と自分自身のことを考えなおしたり、

関わってきた人に思いを馳せたりする場面が多くある作品です。

本の帯にも書いてあるように、

描かれている以上のことを考えさせてくれました

 

最後になりますが、

この作品内に作中作として出て来る「夜の底の川」から

この作品を端的に表した1文を紹介して終わりたいと思います。

 

川のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知り得ない。

 

ぜひ読んでみてください。

終わりに

ここまで、

寺地はるなさんの「川のほとりに立つ者は

を紹介してきましたが、

いかがでしたでしょうか?

 

自身を振り返るだけならいざ知らず、

関わってきた様々な人のことまでも思い出してしまう作品でした。

ラストでは救いのあるシーンも見られたので、

思い悩み過ぎず穏やかな気持ちで終えられた読了感という感じでしたね。

 

対話の大切さに思い至る作品だと自分では捉えましたが、

みなさんのこの作品の感想も聞いてみたいなと思うので

コメントいただけたら嬉しいです。

 

 

当ブログでは、これからも

漫画や小説などの紹介記事を投稿していきます。

本屋大賞ノミネート繋がりでこちらの作品の記事も書いています。

【スパイ】【チェロ】孤独なスパイの苦悩と救いが描かれた作品『ラブカは静かに弓を持つ』
今回は、安壇美緒さんの「ラブカは静かに弓を持つ」を紹介していきます。この作品は「スパイ×音楽」という掛け合わせので、正直、普段はあまり手に取らないジャンルの作品なのですが、今回本作が「本屋大賞」にノミネートされたということで手に取った次第です。ただ、「今までなんで読んでこなかったんだろう」と思えるくらいに面白い作品だったので紹介させていただきます。

ぜひ読んでみてください。

 

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今回はここまで!

ありがとうございました。

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