失踪宣告と遺産相続がテーマのミステリー、下村敦史「絶声」

小説紹介

はい、こんにちは。キザメです。

今回は、夏の読書フェアの一つである

集英社文庫の「ナツイチ2022」より、

下村敦史の「絶声」を紹介していきます。

 

それでは始めていきましょう。

あらすじ

親父がしんでくれるまであと一時間半———。

もう少しで巨額の遺産が手に入る。

ずっと父に疎まれ、愛されたこともなく育った大崎正好は、

その瞬間を待ち望んでいた。

突如、本人名義のブログが更新されるまでは。

「私はまだ生きている」

…父しか知りえない事実、悔恨、罪などが次々と明かされていく。

その声が導くのは、真実か、破滅か。

驚愕のラスト&圧倒的リーダビリティの極上ミステリー!

本書裏表紙より引用

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感想

最初、この本を手に取った時、

あらすじにある

「親父が死んでくれるまであと一時間半—。」

という一文を見て、

時限殺人的な話なのかな?

と思いましたが、全然違いました(T ^ T)

記事タイトルにもあるように、

失踪宣告とそれに伴う遺産相続についての物語でした。

失踪宣告の対象となっているのは、

昭和の大物相場師“と呼ばれた「堂島太平」。

膵臓癌の診断がついてから自宅で療養していた堂島太平が

7年前突然行方がわからなくなる。

以降一切の連絡や情報もなく、

身代金の要求などもないまま時間は過ぎていきます。

 

堂島太平には3人の子供がいます。

長男:堂島貴彦(トレーダーを生業をしている。上手くいっていないようでよく父のもとへ金の無心に来ていた。)

長女:堂島美智香(アンティーク家具のショップを経営。経営がうまくいっていないようでよく金の無心に来ていた。)

次男:大崎正好(後妻の息子。17年前に母と堂島家を追い出される。その後の生活は苦労の連続で、現在はブラック企業の契約社員。)

 

ざっと人物紹介をしただけでも、何かしら裏がありそうで、

全員がお金を欲しているのがうかがえますね。

 

さて、堂島太平が行方不明になってから7年の時がたち、

遺産を望む子供たちは「失踪宣告」の申請を行います。

膵臓癌自体は事実であったため、

さすがに死んでいるだろうと楽観視していた子供たちは、

期日を迎えること待ちわびていました。

 

しかし、あと10分で父の死が認められるというタイミングで、

父のブログが更新されたのです。

 

そして、投稿された記事のタイトルが、

私ははまだ生きている

とあっては、3人は心中穏やかではありません。

果たして堂島太平は生きているのか?

そして、遺産の行方は…?

 

更新されるブログで明かされる堂島太平の過去や思い、

失踪に至った一部始終、そして、子供達への思い…。

決して殺人が起こるような、話ではありませんが、

遺産相続がもたらす不和がリアルに描かれています。

 

そして、最後まで読んだ時、

きっとあなたは読み返さずにはいられないと思います。

堂島太平の仕掛けた罠にあなたは気づくことができるか⁉︎

ぜひ読んでみてください。

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終わりに

ここまで、下村敦史さんの「絶声」

紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?

個人的には、

お金は人を狂わせるというのが、

よくわかる作品だったなと思いますね。

私自身は遺産相続とは恐らく無縁なのでしょうけど、

みんなで等分で後腐れなく終わらせたいなとつくづく思いました。

今回はここまで!

ありがとうございました。

【カドブン夏フェア2022】偽りの春〜神倉駅前交番 狩野雷太の推理〜
今回は、角川文庫の「カドブン夏フェア2022」より『偽りの春〜神倉駅前交番 狩野雷太の推理〜』を紹介していきます。5編の短編からなる作品ですが、犯人視点で展開されるので、追い詰められていく犯人の気持ちが味わえる作品です。

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