自分の生い立ちや自分が何者であるかの保証がある人生に感謝したくなる作品『黄色い家』

小説紹介

はい、こんにちは。キザメです。

今回は、

川上未映子さんの「黄色い家

を紹介していきます。

 

川上未映子さんの作品は、

恥ずかしながら初読みなのですが、

だいぶいろんなメディアで取り上げられている印象があり、

また、本屋大賞2024にもノミネートされたということで

今回手に取ってみました。

 

いや~

紹介の所でも言うとは思うのですが、

自分の生まれた境遇に感謝したくなる小説でした。

 

それでは始めていきましょう。

あらすじ

十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。

危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解し……。

人はなぜ罪を犯すのか。世界が注目する作家が初めて挑む、圧巻のクライム・サスペンス。

Amazon商品ページより引用
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見どころ

いやー重たい話でしたね。 

身分の保証も学歴もお金もない1人の女の子

自分の居場所を守るために社会の闇とも言える世界に足を踏み入れ

そして壊れていった…

そんな濃密な5年間の物語でした。

 

みなさんは、「黄色」にどんなイメージを持っていますでしょうか?

私としては、『幸せの黄色いハンカチ』のような幸運を運んでくるイメージです。

実際、作中でも黄色というのは、

お金を運んでくれる幸運のアイテムとして登場してきます。

ただ、終盤に起こる、行き過ぎた黄色信仰がもたらした行動が、

花のぶっ壊れ具合を如実に写すとともに、

彼女らが住まうこの家の異質さを表すことになるというのは、

何とも皮肉な展開だったなと思います。

 

全編を通して主人公の花の目線で描かれていて、

何か物事が上手くいったときの高揚感や、

自分の行いとは無関係に積み上げてきたものが崩れ去っていってしまう絶望感

といった心の揺れ動きが痛いほど伝わりましたし、

花の目線故に感じていた、

周囲の人間たちのだらしなさや当事者意識にかけた言動といったものが、

最後の方に来て急に

花や一緒に暮らした黄美子さんの方がおかしかったんだと客観的な視点を突きつけられたりして、

最後までしんどかったですね。

 

個人的に印象に残っているセリフやモノローグをいくつか紹介させてください。

「幸せな人間っていうのは、たしかにいるんだよ。でもそれは金があるから、仕事があるから、幸せなんじゃないよ。あいつらは、考えないから幸せなんだよ。」

「あんたは頭が使えるんでしょ。じゃあいいじゃん、それで。頭使って金を稼げば。博奕なんかやんないでふつうに生きていくぶんには、金はわかりやすい力だよ。それはそれでなかなか面白いもんだよ。知恵絞って体使って自分でつかんだ金をもつとね、最初からなんの苦労もなしに金をもってるやつの醜さがよくわかる。頑張んなよ。」

これは、スナック「れもん」を火事で失った後の花に仕事を与えたヴィヴが、花に話した言葉です。

一見すると、何も考えずに生きている人へのディスりのようにも聞こえるのですが、

個人的には、自分の意志で動いて考えて稼ぎ生きようとしている花へのエールのような言葉なのかなと感じました。

個人的にも、看護師としての稼ぎ以外に、

まだまだ微細ながらこうして副業に取り組んでいる自分にとっても

少し励みになる言葉でしたね。

正直言うと、この作中においては、数少ないポジ要素の強い言葉でした。

 

不安とプレッシャーと興奮で眠れない夜がつづいて、思考回路がおかしくなって母親に電話をかけてしまいそうになることもあった。

 

もしもしお母さん、お母さん、わたし大変なんだよ、どうしていいかわかんないんだよ、

 

夢と現の境目でわたしは母親に話しかけていた。

 

ねえお母さん、お母さんはどうやって、どうやっていままで生きてきたの、わたしが子どもの頃、もっと小さかった頃、お金もないのにどうやって、いったいどうやって生きてきたの、みんながどうやって毎日を生きていっているのかがわからない、わからないんだよ、ねえお母さん、いまどうしてるの、お母さんいままでつらくなかった?こわくなかった?ねえお母さん、生きていくのって難しくない?すごくすごく難しくない?お金稼ぐのって、稼ぎつづけないといけないのって、お金がないとご飯も食べられなくて家賃も払えなくて病院も行けなくて水も飲めないのって、すごくすごく難しくない?ねえお母さん、わたしわからないんだよ、どうしていいかわかんないの、いますごく難しいの、難しいんだよ、どうしていいかわかんないの、ねえお母さん聞こえてる?ねえお母さん———。

これは、ヴィヴから請け負った仕事のストレスと、

いつ仕事がなくなってしまうかわからないという不安、

家において自分しか稼いでいないというプレッシャーに押しつぶされそうになっている花のモノローグです。

 

この言葉たちは、わたしを始めとした、

身分の保証があって一般的な成長過程を経て育ってきた人からしたら、全然ピンと来ない感覚なのかなと思います。

分的な保証がなく、後ろ暗い稼ぎ方をしていて、そしてそれがいつ終わってしまうのかわからない…、明日の生活の保証がない人の苦しさをまざまざと感じさせてくれる文章ということで印象に残っています。

 

これほどまでに、

普通の家庭に生まれ、家柄や親の見栄に縛られない生き方ができている自分の人生の有り難みを感じることはないんじゃないかと思わせてくれる作品でした。

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終わりに

ここまで、

川上未映子さんの「黄色い家

を紹介してきましたが、

いかがでしたでしょうか?

 

繰り返しになっちゃいますけど、

重たい内容の話でした。

ただ、自分の人生では経験しないであろう

負の経験、感情に寄ってる作品の方が印象に残ったりしますよね。

 

多分、自分の読書史において

色んな意味で印象深い作品になるなと思っています。

 

当ブログでは、これからも

漫画や小説などの紹介記事を投稿していきますので、

楽しみに待っていていただければ幸いです。

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今回はここまで!

ありがとうございました。

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