【着ぐるみへ抱く愛情】声も姿も知らない中の人へ向けられた叶うことのない愛情の行き先は?「こんこん」

小説紹介

はい、こんにちは。キザメです。

今回は、

水沢なおさんの「こんこん

を紹介していきます。

それでは始めていきましょう。

あらすじ

触れられないから、愛おしい──? テーマパークのきつねのきぐるみ・「こんこん」を愛するまど。その愛は次第に「中の人」への執着へと変わってゆき……。気鋭詩人の言葉きらめく傑作小説

〈いまのわたしをかたちづくっているのは、顔も、名前も知らないあなた。あなただけ──〉
テーマパークの“雪のようで、湧き水のようなきつね”の着ぐるみ「こんこん」を愛するまど。
その“中の人”を見つけ出そうと、「着ぐるみに入れる体格」という条件でマッチングアプリを始め、低身長コンプレックスの男性・ひらくと出会うけれど……。

これは恋? 推し? 信仰? 執着? 
──大好きなあなたと、ただ繋がっていたいだけ。
触れられない「誰か」に焦がれたことのあるあなたへ捧げる、どうしようもなく屈折してどこまでも透き通った、かけがえのない愛の物語。

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見どころ

水沢さんの文体は、なんだか透明感を感じさせてくれるなって思いました。

心情的に暗さやモヤモヤを感じるシーンでも、

頭に浮かぶのは暗闇ではなく、

どこか光の指すような明るい世界観。

それが、陽光の降り注ぐ明るさなのか

雪の降るその白さによる明るさなのか

雨の日の雨粒や水滴、みずしぶきに映るキラキラした明るさなのか

そういう差はあれど、常に白夜のような明るさの伴う情景を感じさせてくれました

 

表題作の「こんこん」は、

主人公のまどちゃんが、

スプリングパークのマスコットキャラ:こんこん

そしてその中の人(特定の一人:まどちゃんは結晶と呼ぶ)に深い愛情を抱くお話。

 

休みの度にスプリングパークに赴き、

開園から閉園までずっとスプリングパークで過ごす日々。

結晶のことは、姿だけじゃなく声も分からない。

でも着ぐるみ越しに感じる温かさは唯一無二

それは他の人のときには感じないもの。

でも、この愛情が実を結ぶことはないとわかっているから、

マッチングアプリで推定の身長、スプリングパークの近隣在住などの条件で

相手を探す。

そうして出会ったのが「ひらく」くん。

ひらくとのデートを重ねつつも常に頭にあるのは、

こんこんのことであり結晶のこと。

そんな一人の女性の抱える想いが描かれた作品です。

 

この作品を読んで、

イメージとして1番しっくりくるのがスノードームです。

特に表題作「こんこん」の主人公、

まどちゃんがこんこん、ひいては結晶に対して抱く感情は、

スノードームを想起させます。

結晶というのは、

まどちゃんがこんこんの中の人につけた呼び名で、

こんこんの挙動一つで、

中の人が結晶なのか違う人なのか判別がつくぐらいには入れ込んでしまっています

決して自分は入ることのできない美しい空間。

愛でてる分には、癒され暖かな気持ちでいられる。

でも、ひとたびその世界に自分も入ろうとすれば、

待っているのは、

割れたガラスで傷ついた手と美しかった姿からは見る影もなくなったスノードームの姿。

越えられない一線があるからこそ成立していた愛情

ひらくとの関わりが増える中で、

突きつけられる男女が付き合う先に求められる体のつながり。

まどちゃんはこう言っています。

私の許せないことは、もうひとつあって。中学生くらいの頃かな。身体目当てって言葉をはじめて耳にして、わたしはすごくショックだったんだ。わたしが、どんな本を読んで、どんなものをかわいいって思って、どんなものを大切におもっているかってことが、つまりはわたしの内側のすべてが、ある一瞬では、どうだってよくなるんだなって。いまでもそう。男の人の部屋にいっちゃいけない、とか、二人きりになっちゃいけない、とか、そういうの、わかるんだけど、本当の意味ではよくわかんない。いち、どこで、どの瞬間から、そうなったの、わたしとあなたの間で何が変わってしまったんだろうって、ずっとわからないままなの

本文より引用

こういう価値観は正直わかるところはあって、

わたしは男の立場にはなってしまいますが、

「したい」と口にして、

体目的なんだって思われやしないかと不安にかられることはやはりあって、

ある意味付き合っているんだからするのが当然みたいな考えにはなれない自分がいたりしました。

だからこそ、

こんこんやその中の結晶とのふれあいに愛情や安心感をもっていたまどちゃんの気持ちは、

あ〜わかるな〜」って思っちゃいましたね。

リアルな人との関わりの中で感じるモヤモヤを抱きつつ、

安心感とともに叶うことのない虚無感もまた感じられてしまう作品だと思います。

刺さる人は結構いるんじゃないかな?

 

この本には、

他に「水滴のシール」という短編と「水色の家」という詩が収録されています。

水滴のシールは、自分の心を埋めてくれる大切なものについて想いを馳せるお話でした。

水色の家は、詩を読み慣れていないので、

まだ自分の中に落とし込めていないというのが正直なところです。

何度も読んで自分なりの感想を持てたら書いていきますね。

 

自分の中の柱であったり、支えてくれているものに目を向けたくなる作品でした

ぜひ読んでみてください。

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終わりに

ここまで

水沢なおさんの「こんこん

を紹介してきましたが、

いかがでしたでしょうか?

 

いや〜

たぶん自分が本屋で眺めているだけでは出会えなかった作品だなって思います。

この本を手に取るきっかけである

「ほんタメ」および「ほんタメ文学賞」には感謝ですね。

当ブログでは、これからも

漫画や小説などの紹介記事を投稿していきますので、

楽しみに待っていていただければ幸いです。

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